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2018.02.08
基礎知識
アリ

シロアリ被害について徹底解説!生態から駆除方法、業者の選び方まで

家に住み着く害虫として有名なシロアリ。滅多に人の前に現れませんし、直接危害を加えられるわけではありませんが、家の倒壊を引き起こす可能性もある厄介な虫の一つです。阪神大震災で全壊、半壊した家の大半はシロアリに土台を食われていたと言われるほどです。

今回はそんな、放ってはおけないシロアリについて、その生態や駆除の方法を紹介していきます。業者に頼むにしても、自分で駆除するにしても、正しい方法で駆除しなければ、また繁殖してしまいます。やる時は正しいやり方で徹底的に駆除しましょう。

 

シロアリとは?

シロアリという言葉を耳にしたことがある人は多いと思いますが、案外目にしたことがある人は少ないのではないでしょうか。シロアリは木を主食にはしていますが、表面上にはあまり出てこないので、普通に生活しているとなかなか目にする機会がありません。まずはシロアリとはどのような昆虫なのか、解説していきます。

 

シロアリはアリの仲間ではなく、ゴキブリの仲間

多くの人が、シロアリをアリの一種だと思っていますが、実はシロアリはゴキブリ目シロアリ科であり、アリではなくゴキブリの仲間なのです。姿形が似ていて社会性のある昆虫であることからシロアリと名付けられていますが、黒アリとは全く別の昆虫ということになります。ちなみに黒アリはハチの仲間です。

シロアリと黒アリの違いは色を見れば一目瞭然ですが、実は身体や羽の形が全然違います。くびれのある黒アリに対して、シロアリの身体は寸胴型です。また黒アリの羽アリは、羽の大きさが前と後ろで違いますが、シロアリの羽アリの羽は、前後の羽が大体同じです。

 

 非常に発達したシロアリ社会

アリには女王アリや働きアリがいることは有名ですが、シロアリもそれぞれ役割を持って社会的な生活を構築しています。「女王アリ」「王アリ」「副女王アリ」「副王アリ」「働きアリ」「兵隊アリ」「ニンフ」など、役割が分かれています。巣の中の9割が働きアリで、「子育て」「餌の収集」「巣作り」などの仕事をこなしています。

「ニンフ」はある時期になると羽が生えてきて、「羽アリ」となります。巣を飛び出た羽アリ新しい巣を作る役目があります。私たちが普段目にしている羽アリの中には、シロアリの一種もいたかもしれません。

 

 木材由来のものならほとんどなんでも食べる

シロアリが木材を食べて、家に被害を加えるということを聞いたことがあると思いますが、シロアリが食べるのは木材だけでなく、木材からできたものはなんでも食べます。シロアリは目が退化しているため、匂いをかぎ分けて餌を見つけています。特に湿っていて腐り始めた木が好物で、腐った木を見分けて食べているのです。

新聞紙や畳、衣類など植物由来のものも餌としていますし、タンスや本棚でも木でできたものも、もちろん狙われています。また、時には電線やコンクリートなどもかじってしまうため、思いがけないトラブルを引き起こすことにもなるので気をつけましょう。

 

日本でみるシロアリの種類

世界では2,900種類以上もいると言われているシロアリですが、そのうち日本での存在が確認されているのは22種類です。さらにその中で、建物などに被害を与えると言われているのは「ヤマトシロアリ」「イエシロアリ」「アメリカカンザイシロアリ」の3種類と言われています。

それぞれの種類によって、好む場所や地域、巣の作り方も違います。被害の出し方や対策の仕方が変わる場合もあるため、自分で駆除する場合にはどのシロアリなのかを見分けてから対策しましょう。

 

ヤマトシロアリ

ヤマトシロアリは北海道を除いた日本全国でその被害が確認されており、シロアリの中で最もポピュラーな種類です。特別に材料を集めてきて巣を作るわけではなく、餌となる材木をそのまま巣にしてしまいます。ほとんど常に、快適な餌と住環境を探しながら集団行動をしているため、敵が現れた場合も反撃するのではなく、集団での逃亡を選びます。

シロアリ自体乾燥に弱いですが、ヤマトシロアリは特に湿った木材などを住処として利用しています。そのため台所や浴室といった水回りが被害に遭いやすいです。逆にいうと乾燥していて明るいところには弱いので、換気をしたり日の光を当てるなどの対策をしっかりしていれば、被害に遭うのを防ぐこともできます。

 

イエシロアリ

ヤマトシロアリと並んで日本で被害が多いのが、イエシロアリです。ヤマトシロアリとは全く違う生態をしており、巣は特別に加工した塊のようなものを作ります。一度巣を作ると、行動範囲は巣を中心に100メートルにまで及ぶと言われています。

そしてイエシロアリの大きな特徴はその攻撃的な性格です。自分たちで巣を作らないヤマトシロアリと違い、自分たちで巣を作る家シロアリは巣を守るために、噛みついたり分泌液を出して応戦します。さらに厄介なのは、湿った木材を選んで住み着くヤマトシロアリと違い、イエシロアリは乾いた木材であっても自分で水を運んできて住み着くのです。そのため被害のスピードが速いと言われています。

 

アメリカカンザイシロアリ

アメリカカンザイシロアリは、もともと日本にはいなかったシロアリの種ですが、日本に運ばれる木材と一緒に運ばれてきたと言われています。最も大きな特徴は、その名の通り乾燥した材木(カンザイ)を餌とするところです。そのため、ヤマトシロアリやイエシロアリを対策していても被害に遭うケースもあります。

また、イエシロアリやヤマトシロアリが地中に巣を作り、床下から侵入してくるのに対し、アメリカカンザイシロアリは羽アリが飛来して2階や壁からも侵入してきます。そして一つ一つの巣が小さいため専門家でも気づきにくく、一つの巣を駆除しても根本的に解決にならないため、全滅させるのが困難と言われています。

被害の進行スピードが遅いため、早期に発見できれば大きな被害にならずにすみます。しかし、被害のスピードが遅いゆえに発見が遅れて、気付いた時には全滅させるのが困難なほど巣を作られている場合もあります。少しでも違和感を感じた時は専門家に調べてもらいましょう。

 

シロアリが生息しやすい場所

放っておくと大変なことになるシロアリですが、実際にどんな巣を作るのかが分からない人も多いのではないでしょうか。ここではシロアリが巣を作るのに好都合な場所を紹介していきます。どこに巣を作られても家の崩壊危機に繋がるので気をつけましょう。

 

床下

シロアリの被害に遭うのに床下をイメージする方は多いと思います。床下一年を通して湿度が高く、シロアリの大好物である木材が多く使われているため、巣を作るのにこれほど適した場所はありません。

最近では腐りづらい固い木材を使って、シロアリ対策をしている家もありますが、どうしても床下というのは湿気が高くなります。特に最近は暖房機器の発達により、外気温との温度差が大きくなっているため、以前に比べても湿度が高くなっているのです。従来の湿度では大丈夫だと思われていても、予想外の湿度の高さに耐腐性のある木材でも安心できるとは限りません。

いい木材を使っているからと油断せず、たまに床下をチェックして早期発見できるようにしましょう。

 

水回り

床下の次にシロアリが好きな場所が、お風呂場や台所などの水回りです。シロアリは湿度の高い場所が好きなので、水回りを好むのは容易に想像できると思います。トイレや洗面所などで羽アリを見つけたら、高い確率でシロアリの羽アリと考えてもいいでしょう。

シロアリが水回りを好むのには他にも大きな理由があります。それは黒アリやクモなどの天敵がいないことです。アリやクモは水が苦手なため、水回りにはあまり近づかないのです。湿度が高く天敵がいなというのは、シロアリにとってとても安全性の高い場所となります。

水回りで見るシロアリの羽アリは成虫で、巣を出て別の巣をどこに探している確率が高いです。通常床下などで生活しているシロアリが、水回りなど一目につく場所にでてきたということは、シロアリの浸食がかなり進んでいることが考えられます。水回りで羽アリを見つけた場合は、即座にシロアリの調査を業者に依頼しましょう。

 

柱や屋根裏

シロアリは湿気が高く、木材があるところはどこでも巣を作ってしまうため、柱や屋根なども十分に注意が必要です。特に柱は床下を浸食されるよりも怖く、柱がスカスカにさせられることで、ちょっとしたことで家全体が崩壊する危険性も出てきます。浸食された柱は外見には大きな変化がないので気付きにくいですが、叩くと空洞音がしたり押すとへこむ場合もあります。気になったときは柱を叩いて確認してみましょう。

屋根裏は床下と違い湿度が高いイメージがありませんが、実は屋根裏は湿度が上がりやすい場所と言えます。温度の高い空気は下から上へと移動するので、部屋の空気で屋根裏が温められます。そして古い家の場合は屋根裏が雨漏りしている場合もあり、シロアリにとって住み着くのにとても好都合な場所になるのです。

気付かないうちに屋根裏が浸食されていると、ちょっとした地震でも屋根が崩れ落ちてくる事態にもなりかねないので注意が必要です。普段あまり注意深く目にするところではない分、意識的に時期を見てチェックする習慣をつけた方がいいかもしれませんね。

 

シロアリ被害に遭いやすい家の特徴

シロアリが出やすい家の特徴をまとめると、大きく「湿度が高い」「餌となる木材が多い」の2つがあげられます。シロアリに限らず多くの生物が食料と住処を探しているので、そのどちらも併せ持つ家はシロアリにとって好都合となります。

湿度が高い家

では湿度が高い家とはどんな家でしょうか。まず立地的に言えることは近くに川や池、井戸などがあると地盤全体に水分が多く含まれているため、自然と湿度も高くなります。立地的な問題は解決しづらいですが、周りに川などがある場合は特に注意して対策する必要があります。

また雨漏りで壁や床などにシミができている家も危険です。木材自体が水を吸っているのでシロアリに狙われやすくなります。室内に水が入ってくるほどの雨漏りじゃないと気にしない家庭も多いですが、シミを発見したら雨漏り対策をしたり、除湿しなければシロアリを寄せ付けることになります。

 

木材が多い家

湿度と同じくらいシロアリが好きなのが、餌となる木材です。家の近くに廃材や木製の家具などを設置しているのは大変危険です。特に地べたに直接木材が置いてあると、土の中にいるシロアリが直接木材に達することができるので、これほどシロアリにとって嬉しいことはありません。さらにその木材から家の基礎、そこから構造部にまで侵入されると取り返しのつかないことになります。

庭に植木をしていたり、玄関やエントランスに木材を使っている家も同じ理由で、シロアリの被害に遭いやすいと言えます。できるだけ影ができないように工夫しながら、湿度が上がらないように気をつけましょう。

 

シロアリの駆除方法

シロアリを駆除するには大きく、「自分で駆除する場合」と「業者に依頼して駆除してもらう場合」があります。シロアリは社会的な虫なので、素人が中途半端に駆除してしまうと、それまで一か所で集団生活していたシロアリを分散させてしまうと、余計駆除が難しくなる場合もあるのです。予算を考えながらベストな方法を選びましょう。

 

自分で駆除する場合

まず自分で駆除する方法ですが、「薬剤散布法」と「ベイト(毒餌)工法」があります。それぞれメリット、デメリットがあるので、自分の状況に合わせて効果的な方法を選びましょう。

薬剤散布法

薬剤散布法は、字を見て分かる通り、シロアリ駆除用の薬剤を使って駆除する方法です。散布する場所は主に建物の床下か木材となります。床下の土壌に散布すれば地下のシロアリが地上に出てこなくなるので、予防としても効果的です。木材に散布する場合は表面に塗布する場合と、穴を空けて木材の内部に注入する場合があります。

薬剤散布法は即効性と、その後シロアリを寄せ付けない予防効果がありますが、扱いに注意が必要です。赤ちゃんやペットがいる場合は、薬剤が体内に入らないよう気をつけなければなりません。また、床下はシロアリ以外の害虫、害獣がいる可能性もあるので注意しましょう。

 ベイト工法

ベイト(毒餌)工法は、シロアリ駆除剤を混ぜた餌をシロアリの移動ルートに設置してシロアリを駆除する方法です。薬剤を使うのに比べて赤ちゃんやペットに気を遣う心配がいりません。毒餌を食べたシロアリはすぐに死に至るわけではなく、巣へ戻り毒が伝染されます。そのため、巣全体に毒が周り、女王アリや王アリに伝染されればシロアリを全滅させることができます。

しかし、ベイト工法は薬剤散布法と違い、即効性がなく予防として使うには難しいです。シロアリを発見してまで被害が小さい時であれば効果的ですが、既に被害が大きくなってから使うにはおすすめできません。また、毒餌の効果的な置き場所は知識や経験が必要なため、素人が設置しても期待通りの効果が出るかは保証できません。

素人の駆除は被害を拡大させることも⁉

シロアリは生命力が弱く、市販されているシロアリ駆除剤などを使い駆除するのはさほど難しくありません。しかし、家に潜むシロアリを全滅させるとなると話は別です。シロアリは常に移動しながら餌を探しているため、運よくシロアリの被害にあった柱を見つけたとしても、まだそこにいるかは分からないからです。

素人によくありがちなのが、下手に薬剤など使ってシロアリを刺激してしまい、一時的に被害が減りますが、再びシロアリが巣を作り始めてしまうことです。二度目では組織を分けてしまうことになるので、一度目よりも全滅させるのが難しくなります。また、シロアリ駆除剤ではなく、通常の殺虫剤を使用した場合、羽アリの死骸や羽が殺虫剤の油によってくっついてしまい、掃除するのが大変になるケースもあります。

シロアリを全滅させるのに大切なのは、薬剤を使うまえにシロアリがどこにいるか、どこにどれくらい被害があるのか性格に把握して、駆除剤を使うことです。しかし、これはなかなか素人では難しいのが現実です。シロアリ被害を長期的に抑えたいのであれば、多少お金がかかってもプロにお願いするのが得策でしょう。

 

業者に依頼して駆除してもらう場合

シロアリ被害を確実に抑えたいなら、最もおすすめなのはプロの業者に依頼することです。シロアリの習性を熟知しているプロであれば、一度の駆除作業でシロアリを全滅させるので駆除作業をした後にシロアリが残っている可能性が極めて低くなります。

シロアリ駆除の料金相場

シロアリの駆除を業者にお願いする場合、一般的には坪単価で料金が決まる場合が多いです。目安としては7,000~9,000円ぐらいなので、極端に安かったり高かったりする場合はその理由について聞いてみましょう。怪しいと思った場合は、いくつかの業者に問い合わせて最も信頼できそうな業者を選びましょう。

また、料金だけでなく、しっかりサービス内容も確認する必要があります。初めて業者に依頼する場合は、サービス内容が適正かどうかは判断がつかないと思いますが、アフターフォローを特に確認しましょう。シロアリ駆除は一時的に被害を減らすだけでは意味がないので、しっかりアフターフォローや保証があれば優良業者の可能性が高いです。

シロアリ駆除の料金の違いは「薬剤」と「作業内容」の違い

シロアリ駆除の坪単価あたりの料金は業者によって違い、家が大きくなればその差は数十万も変わることになります。ではなぜそのような差が生まれるのでしょうか。その違いは駆除に利用する「薬剤」の違いと、駆除のためにおこなう「作業内容」の違いによります。

シロアリ駆除に使う薬剤の種類はさまざまあり、業者によってどの薬剤を使うかも変わります。また、多くの薬剤は希釈して利用しますが、業者にその希釈率も変わってくるのです。料金相場よりも安い業者の場合、適切な薬剤が使われていなかったり、大きく希釈することによって料金を下げている場合もあります。ひどい場合には効果が薄まったり、住んでいる人達への悪影響が出ることもあるため、安いからといって業者を選ぶのは大変危険です。

また、作業内容によっても料金は変わります。例えば建材に薬剤を注入する場合でも、表面に塗布する場合と、建材に穴をあけて薬剤を注入する場合があります。建材に穴を空ける場合、それだけ手間がかかりますし、終わった後の処理や住まいの空間に悪影響を与えないケアもしなければなりません。表面に塗布しても駆除効果はでますが、手間をかけて薬剤を注入した方が効果も高まります。作業内容ひとつとっても駆除効果は大きく違うため、事前にどのような作業内容なのかを確認したほうが確実です。

料金に何が含まれているか確認を

料金が相場の範囲内であれば、効果にある程度の差はあれ問題ないですが、相場から大きく離れている場合はトラブルに繋がる場合があります。極端に安い場合、使用している薬剤が業界団体に認定されていない安価なものを利用していたり、推奨されている希釈率よりも薄めて使っている場合もあります。

また通常であれば5年程度の保証がついているものですが、極端に料金が低い場合保証がついてない場合もあります。それだけ効果に自信がないことの表れでもあるため、保証がついているかも要チェックです。

逆に料金が極端に高い場合も要注意です。たとえば白アリ対策のために床下に換気扇を設置したりリフォームをする場合がありますが、不要な換気扇を設置したりリフォームをするのは悪質業者の常套手段です。とはいえ、全てのリフォーム工事がぼったくりではないので、素人目ではその工事が本当に必要かどうか判断がつきづらいです。そのため、いくつかの業者に問い合わせをしてみて見積もりを出してもらうのが確実です。どの業者も換気扇の設置やリフォームを提案してきた場合、本当に必要な工事なため、その中から最も信頼できそうな業者を選びましょう。

中途半端な対策は被害を拡大する恐れも

シロアリの危険性について解説してきましたが、最も厄介なのはシロアリを駆除しようと中途半端に対策すると余計駆除が難しくなる点かもしれません。社会性に富むシロアリは普段集団で生活していますが、駆除をしようとして失敗するとシロアリの集団が複数に分かれて全滅させるのが難しくなります。

生命力が弱いシロアリは個体を駆除すること自体は大変ではありませんが、全滅させるとなると豊富な知識や経験が必要になってきます。シロアリの駆除剤は大量に市販されていますが、効果的に使えないと逆効果になる場合もあります。長期的にシロアリ被害の心配をなくしたいのであれば、多少の出費を覚悟で業者に依頼するのが最も効果的と言えるでしょう。

 

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